9価 子宮頸がんワクチンの定期接種が始まりました
滋賀県守山市、小児科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。
令和5年4月から9価の子宮頸がんワクチンの定期接種が始まりました。
今回は、子宮頸がんワクチンについてお話ししたいと思います。
子宮頸がんワクチンって?
その名の通り、子宮頸がんを予防するワクチンです。
子宮頸がんは「予防できる癌」です。癌を予防できるなんてすごいと思いませんか。
なぜ癌をワクチンで予防することができるのでしょうか。
子宮頸がんのうち95%は、女性の子宮の入り口に「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスが感染することによって起こるからです。
世界的には2007年からHPV ワクチンの人への接種が開始され、世界100か国で定期接種となっています(2022年12月時点)。HPV ワクチンを積極的に接種している国では、ワクチン接種を受けた世代の女性における子宮頸がんの発生数がおよそ 90%減少しています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)について
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、インフルエンザやコロナウイルスなどのように突然変異によって姿を変えることがありません。そのため、一度ウイルスに対する免疫を獲得するとずっと感染予防することができる感染症です。
HPVが皮膚や粘膜に接触すると、ウイルスの遺伝子が細胞内に入り込んでウイルスが増殖します。HPVは少し触れあっただけで感染することはなく、細胞の深い層に到達することで感染が起こります。
生涯のうちにHPVに感染する女性は50~80%と推定されていて、性交経験のある女性はほぼ全員が感染すると言われます。そのくらいありふれたウイルスであるということです。
9価ってそもそも何でしょうか
「9価」とは、「9種類」という意味です。「4価ワクチン」は4種類のウイルスを、「9価ワクチン」は9種類のウイルスを予防することができます。
HPVには200種類以上の種類があります。このうち、子宮頸がんや中咽頭がん(のどの癌)などの原因となる型を「ハイリスクHPV」といいます。
これまでの4価ワクチン「ガーダシル」では、4種類のHPVウイルス(うちハイリスクHPV2種類を含む)をカバーしていました。今回の9価ワクチン「シルガード9」では、これに加えて合計9種類(ハイリスクHPVでは7種類)のHPVをカバーできるようになります。
子宮頸がんワクチンの対象者は
定期接種
小学校6年生から高校1年生相当の女の子が対象です。
シルガード9で定期接種を開始する場合は1回目の接種を受ける年齢によって以下のように接種回数が異なります。
キャッチアップ接種
過去に定期接種の機会を逃した方が対象となります。
具体的には
- 平成9年度生まれ~平成17年度生まれまでの女性(誕生日が1997年4月2日〜2006年4月1日)の女性
- 過去にHPVワクチンの合計3回の接種を完了していない
※このほか、平成18・19年度生まれの女性は、通常の接種対象(小学校6年生から高校1年生相当)の年齢を超えても、令和7(2025)年3月末まで接種できます。
【接種可能な期間】
令和4(2022)年4月〜令和7(2025)年3月の3年間、無料(公費助成)で接種を受けられます。
副反応について
HPVワクチンは80%の確率で接種後に接種部位の腫れや痛みが出ると報告されています。
重い副反応については、2022年9月までに接種された12万件のうち、36件報告されています。およそ3千人に1人の確率です。治験では、アナフィラキシー反応のほか、手足に力が入らなくなる「ギランバレー症候群」などが報告されています。
また、9価ワクチンはこれまでの4価ワクチンに比べて5%ほど接種部位の腫脹・痛みの出現確率が高いとされています。
これまでガーダシルやサーバリックスを打った方は
これまでにガーダシルやサーバリックス(2価ワクチン)を1回または2回接種している方は、原則として同じ種類のワクチンを接種することをお勧めします。異なる種類のワクチンを接種することの安全性が検討されていないためです。
ただし、ご相談の上 途中からシルガード9に変更し、残りの接種も完了させることもできます。キャッチアップ接種の方も同様です。
子宮頸がんの予防にはワクチン接種に加え、定期的な検診が大切です。ワクチンの接種によって子宮頸がんを100%予防できるわけではないからです。
20歳を過ぎたら2年に1回、子宮がん検診を受けましょう!