耳鳴りについて

滋賀県守山市、小児科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。

今回は耳鳴りのお話です。

耳鳴りは「外に音がないのに耳や頭に音を感じる現象」です。人によってかなり症状に個人差があります。

数秒で終わるものからずっと続くものまでさまざまで、音の大きさも静かな密閉空間でようやく感じる音から、耳鳴りが大きすぎて周りの音が聞こえないほど大きなものまであります。

音の種類は「ピー」という高い音、セミの鳴き声のような音、水の流れるような音や脈打つような音など、さまざまな耳鳴りがあります。原因となる病気と音の種類との間には関係がある場合があり、具体的に症状を伝えていただくことで診断につながりやすくなります。

耳鳴りの原因

耳鳴りの原因としては難聴(聞こえにくさ)が最も多く、自分以外の人には聞こえない場合がほとんどです。耳鳴りが鳴る仕組みについては数多くの研究が今も行われていますが、実はまだ結論が出ていません。耳鳴りは、原因となる特定の物質はなく、様々な要因が複雑にからみあって発症するのではないかと考えられています。

たとえば、難聴のあるすべての人が耳鳴りに困っているわけではありません。また、耳の聞こえは問題ないのに耳鳴りがする人もいます(無難聴性耳鳴といいます)。

今のところ、耳鳴りは脳のはたらきの問題で起こるとする説が有力とされています。

耳は「聴神経」で感知した音を電気信号に変えて脳に伝える役割をしています。脳では音の高さごとに感知する領域が異なっていて、それぞれが他の音域をつかさどる脳の領域が変に興奮しないように抑える働きも担っています。

ところが、聴神経が何らかの原因でダメージを受けると、聴神経から脳に送る情報が少なくなってしまいます。すると聞こえにくい音の高さを感知していた脳の部分が、他の音の高さに対応している脳の部分と融合してしまうと考えられています。

そうすると、他の音の高さに対応している部分の脳が興奮しないように抑える力が働かなくなってしまい、聴神経から信号がなくても、脳が「音がした」と勘違いして活動してしまうというものです。

また、まれに耳の中や聴神経の近くに腫瘍があって耳鳴りの原因となることもあります。鼓膜所見や聴力検査で疑わしい場合は画像検査などで精査を行います。

耳鳴りの治療

耳鳴りが難聴(聞こえにくさ)によって起こっていて、その難聴が治療可能な場合、難聴に対する治療を行います。

しかし、治療できない難聴が原因であれば、残念ながら耳鳴りそのものに根本的に効く薬は今のところありません。

周りが静かな環境になると耳鳴りが強くなる傾向があります。夜、耳鳴りが大きくなって寝られないときは、好きな音楽やラジオなどで静かな環境をなるべく避けることが効果的です。どのような音が耳鳴りを改善させるかは人によって異なりますので、いろいろ試していただくとよいと思います。

また、日中は補聴器を使って音をしっかり聞けるようにすることで、耳鳴りが気にならなくなることがあります。難聴のため音が入ってこず、それによって起こっている脳の異常な興奮を回復させることができるからと考えられています。

本日はちょっと専門的でわかりにくい話だったかもしれません。耳鳴りは時に不眠や気分の落ち込みにつながるつらい症状です。一人で悩まずに一度耳鼻咽喉科にご相談ください。