百日咳にご注意ください

滋賀県守山市、小児科・アレルギー科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。

2024年7月に入ってから、当院がある滋賀県草津保健所管内で、14例の百日咳感染が報告されました(第29週までの報告による)。当院でも数名の方を診断しています。
10代前半の方に多く、今後小中学校や家庭内での感染拡大が懸念されます。

百日咳とは

百日咳とはどんな病気なのでしょうか。読んで字の如く、100日間も咳が続くしんどい病気なんだろうと想像できます。まさにその通りで、とにかく咳がひどく長く続きます。

具体的な特徴は下に記載している通りですが、感染力が非常に高く、家庭内や学校、職場で容易に集団感染が起こります。特に新生児・乳児は重症化リスクが高く注意が必要です。

百日咳の症状

具体的な症状について見てみましょう。

百日咳の症状はカタル期・痙咳期・回復期と3つの時期に分けられます。

1.カタル期

初めはくしゃみ、鼻水、咳などカタル症状と言われる風邪のような症状から始まり、この時期を「カタル期」と呼びます。感染力が非常に高い時期ですが、よくある風邪症状なのでこの時に百日咳を疑うのは非常に困難です。そのことが感染を拡大させてしまう要因でもあります。

2.痙咳期(けいがいき)

そして2週間後くらいから、特徴的な咳がみられるようになります。この時期を「痙咳期(けいがいき)」と呼びます。

短く連続する咳が発作的に起こり(スタッカート様咳嗽)、続いて息をすう時に「ヒュー」という音が出るのが特徴です(ウーピング)。この発作のような咳嗽が繰り返されます(レプリーゼ)。

特に夜間に多く見られ、咳の発作後に嘔吐することもあります。

軽症の場合は、咳が長期にわたって持続していても、典型的な発作性の咳嗽を示さない場合もあります。

新生児・乳幼児では無呼吸発作やチアノーゼ(皮膚や唇が青紫色になる)、けいれんを認めることがあり、重篤な状態に陥る危険性があるため入院を必要とする場合があります。

3.回復期

数週間から数か月して徐々に咳が治まってきます。

検査

上記の様な特徴的な咳が見られたり、咳が長引いていたり、周囲に百日咳の人がいたりする場合に百日咳を疑い、検査を行います。

当院では、百日咳LAMP法で検査を行っています。コロナの抗原検査と同じく、鼻の奥から検体を取ります。外注検査であり、結果が出るまで2-4日ほどかかります。また、金曜日午後と土曜日には検査できませんのでご了承ください。

百日咳の治療

検査をしたら、検査結果を待たずに治療を開始します。

百日咳の治療には、マクロライド系の抗菌薬を使用します。クラリスロマイシンであれば7日間内服します。

しかし抗菌薬を内服していても、咳がマシになってきているという実感があまりないかもしれません。

というのは、咳嗽発作は百日咳菌が出す毒素が原因で起こっているので、抗菌薬が百日咳菌を除去することはできても、一度出た毒素には効果がありません。そのため症状の改善には少し時間がかかります。

登校してよい基準

学校保健安全法で決められた登校して良い基準としては、「上記の特有な咳が消失すること、または適切な抗菌薬を5日間内服していること」とされています。

抗菌薬をしっかり飲むことで感染拡大を防げますので、咳があまりよくなってきている印象がなくても、最後までしっかり内服してください。

百日咳はワクチンで防ぐことができます

百日咳を早期に診断することが難しい以上、そもそもかからない様にすることが大切です。百日咳にかからないようにするためには、ワクチン接種が重要な役割をはたします。

現在日本では、百日咳のワクチンはこどもの定期接種に組み込まれています。五種混合ワクチンとして、1歳未満に3回、1歳6か月頃に1回、計4回接種します。
ではこのワクチンを接種していたら一生かからないのかというと、残念ながらそうではありません。

弟や妹を百日咳から守ろう! 

就学前と小学校高学年になってからのワクチン接種について


実は小学校入学前後くらいから百日咳の免疫(抗体価)が下がり始めて感染しやすい状況になります。その頃に百日咳に感染し、気づかないまま生後間もない弟や妹にうつしてしまい、重症化してしまうような状況が起こりえます。

そうならないように、日本小児科学会では「就学前に三種混合ワクチンの接種、11歳-12歳で定期接種する二種混合ワクチンの代わりに三種混合ワクチンの接種(いずれも任意接種)」を推奨しています。それらを接種することにより、百日咳の抗体が維持され、罹患しにくくなります。妹さんや弟さんを守るために是非ご検討ください。

当院でも接種可能ですので、お電話や受付でお申し出ください。