乗り物酔いについて

滋賀県守山市、小児科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。

もうすぐシルバーウィークですね。お出かけの予定を立てている方も多いのではないでしょうか。

今回はそんなシーズンにお役立ていただけるようなテーマを選んでみました。

みなさんは乗り物酔いしやすい方でしょうか。子供の頃は車に乗るとすぐに気持ち悪くなってしまったが大人になってからは大丈夫、普通に乗っていると大丈夫だがスマホ操作や本を読むと酔ってしまう、という方もいらっしゃるかもしれません。

実は乗り物酔いについては、2000年前のギリシャでヒポクラテスが船酔いについて記載しています。古代の人たちも苦しめられていたのですね。

最近だとVR映像や大画面のシミュレーターなど、乗り物に乗っていなくても症状が引き起こされることがあります。

乗り物酔いはなぜ起こる?

乗り物酔いは自分が感じた感覚と、自分の周囲の状況が一致しないときに感覚が混乱して起こると考えられています。

私たちは、目で見た情報と耳で感じたバランス感覚、どのような地面に立っているかなどの足の筋肉などからの感覚を通して、周囲の空間を認識しています。

この情報がそれぞれ一致しなかったり、今までに感じたことのない感覚のパターンだと、乗り物酔いの症状が起こります。

起こりやすい年齢は2歳から12歳で10代が特に多く、女性の方が男性に比べて2倍起こりやすいといわれています。

ちなみに、乳幼児は乗り物酔いがほとんど起こりません。赤ちゃんはまだバランス感覚が未熟で、これまでに学習したバランス感覚のパターンができあがっていないからだとされています。

小学生ごろになってバランス感覚ができあがってくると、慣れない刺激に混乱していまい症状があらわれることがあります。

乗り物酔いの症状

・吐き気

・体温調節がうまくいかない(冷や汗、顔が青白くなる、逆に真っ赤になる)

・めまい、ふらつき、失神

・頭痛

・目の疲れ、焦点が合わない

など

予防と治療

①慣れる

乗り物酔いは慣れることで症状が出なくなることがあります。これは、乗り物酔いを引き起こすような感覚に何度もさらされることで、その感覚のパターンに慣れていき、脳が「これは大丈夫」と認識するようになるからです。

慣れるためには、酔いやすい乗り物に少しずつ乗る時間を増やしていったり、ブランコやシーソー、鉄棒、マット運動など、バランス感覚を鍛えやすい遊具で遊ぶ機会を増やしたりすることが効果的です。

②見ているものと耳で感じるバランス感覚のミスマッチが起こらないようにする

例えば、乗り物に乗っているときはなるべく遠くの景色を見るようにすると、視野が安定してミスマッチが起こりにくくなります。

車であれば自分で運転したり、助手席に乗っているときはなるべく前の景色を見るようにする、車の動きを予測して頭を動かすようにすると酔いにくく、電車やバスは進行方向向きの席に座ることも予防につながります。

遠くの景色を見ることが難しい場所では、目を閉じて頭をなるべく動かさないようにすることも効果的です。

③寝る

寝てしまうと、空間を認識するような脳の働きを休ませることができ、乗り物酔いしなくなります。

④楽しく過ごす

ジェットコースターに乗る場合、楽しんで乗っていると酔いにくいのですが、嫌がって乗っていると酔いやすくなります。これは、乗り物酔いに「快-不快」の判断をする脳の扁桃体という場所が関わっていることが原因とされているからです。

楽しく過ごすことや、おまじないのように「これで乗り物酔いしないよ!」という思い込みが効果的な場合があります。

⑤嫌なにおいを嗅がない

これも脳の扁桃体という部分が関わっているのですが、においは感情の動きと連動しやすく、例えば車の中のにおいを嗅いだだけで気持ち悪くなる子どもがいるのもこのためです。

窓を開けて車内の換気をすると症状がよくなることがあります。

⑥ゆったりした服を着る、胃腸の調子を整える

吐き気が起きにくい服装や、体調を整えて乗り物に乗ることも予防に効果的です。

治療薬

残念ながら日本には乗り物酔いの予防薬として処方できる薬はありません。

乗り物酔いが起こった時には、抗ヒスタミン薬というお薬を使って脳の働きを休ませることで、症状を抑えることができます。眠くなりますので運転をする方は服薬できません。また、抗アレルギー薬として処方される抗ヒスタミン薬には眠くなりにくいものがあり、これは乗り物酔いには効果がありません。

楽しいおでかけが乗り物酔いで台無しになると残念ですね。ぜひ参考にしていただいて元気に旅行を楽しんでいただけたら幸いです。