「稲アレルギー」だと思っていませんか? この時期に増えるイネ科花粉症

滋賀県守山市、小児科・アレルギー科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。

守山市は田んぼが多い地域です。そのためか、この時期になると「田植えが始まったから花粉症が出てきた」という話を耳にすることがあります。

今日はそんな「田植えと花粉症」の関係について、少し雑学的なお話をしてみたいと思います。

この時期の花粉症は「稲の花粉」が原因と思われがちですが、実は必ずしもそうではありません。

5月から初夏にかけて多く飛散するのが、イネ科植物の花粉です。

代表的なものとして、カモガヤ、オオアワガエリ(チモシー)、ハルガヤなどがあります。

カモガヤ
オオアワガエリ
ハルガヤ

これらは河川敷や空き地、道路脇、公園など身近な場所に生えており、花粉症の原因になることがあります。

田植えの時期とイネ科花粉の飛散時期が重なるため「田植えが始まったから花粉症になった」と思われることがありますが、原因は実は稲ではなくカモガヤなどのイネ科の雑草であることが一般的です。

「稲もイネ科なのだから、稲の花粉でも花粉症になるのでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

実際、稲の花粉も風によって運ばれる花粉であり、理論上はアレルギーの原因となり得ます。また、稲の花粉によるアレルギーが全く存在しないわけではありません。

しかし、日本で一般的な花粉症の原因として問題になることはあまりなく、この時期の花粉症の主な原因はカモガヤやオオアワガエリなどのイネ科雑草と考えられています。

では、なぜ同じイネ科なのに違いがあるのでしょうか。

実は、その理由を一言で説明するのは簡単ではありません。

稲の花粉は開花する時間が限られていることや、空気中に存在する時間が比較的短いことなどが関係していると考えられていますが、それだけで説明できるわけではありません。また、花粉症の起こしやすさには花粉に含まれるアレルゲンの性質や、人がどの程度その花粉を吸い込むかも関係します。

そのため、「稲の花粉は飛ばないから花粉症にならない」と単純に説明できるものではなく、複数の要因が関係していると考えられています。

ただ、日常診療で田植えの時期の花粉症が疑われる場合、その原因としてまず考えるのは稲ではなく、カモガヤなどのイネ科雑草です。

スギやヒノキの花粉は数十キロ以上離れた場所まで飛散することがあります。

しかしイネ科花粉は比較的大きく重いため、飛散距離は数十メートル程度とされています。

そのため、河川敷、草地、公園、あぜ道、空き地など、植物の近くで症状が強くなることが特徴です。

山から離れた場所でもスギやヒノキの花粉からはなかなか逃げられませんが、イネ科花粉症は雑草の多い場所を避けるだけでも症状が軽くなることがあります。

症状が出てしまった場合は、抗アレルギー薬や点鼻薬、点眼薬などで症状を和らげることができます。

なお、スギ花粉症では根本治療として舌下免疫療法が行われていますが、イネ科花粉症に対する舌下免疫療法は現在日本では承認されていません。海外では実施されている国もありますが、日本では薬物療法が治療の中心となります。

症状が強い方は、ひどくなる前に受診していただくことをお勧めします。