小児アトピー性皮膚炎の治療について

こんにちは。滋賀県守山市、小児科・アレルギー科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。
10月に入り、運動会の練習をがんばっておられるお子さんも多いことと思います。運動会の練習中は、汗をたくさんかいたり、運動場で砂ぼこりにさらされたりと、どうしても肌の調子が悪くなりやすいものです。
今回はアトピー性皮膚炎の治療について、基本的なことと最新の治療法についてお伝えします。
治療の基本は「外用療法」と「スキンケア」
アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚の病気です。
特に、こどもの病気では、喘息(ぜんそく)やアレルギー性鼻炎の発症リスクとなるだけでなく、生活の質の低下や成長・発達に影響を及ぼす可能性もあります 。
そのため、早期に炎症を抑え、適切に管理していくことが非常に大切です 。
まずは炎症をしっかりと抑える「寛解導入療法」
治療の最初の段階では、炎症やかゆみを速やかに軽減し、症状のない状態(寛解)を目指します。これを「寛解導入療法」と呼びます 。

アトピー性皮膚炎の治療の中心となるのは外用薬です 。ステロイド外用薬がこの段階では中心的な役割を果たし、皮疹の程度に合わせて適切な強さの薬剤を選んで使用します 。
見た目の湿疹がなくなっても、皮膚の下には潜在的な炎症が残っていることが多いため、外用薬やスキンケアを継続することが重要です 。
症状の安定を保つ「寛解維持療法」
症状が落ち着いたら、次はその良い状態を維持する「寛解維持療法」に移行します 。治療の目標は「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく薬物療法もあまり必要としない状態」を保つことです 。
この時期には、以下の二つの方法が主に用いられます。
リアクティブ療法…炎症が再発した時にだけ、外用薬を使用する方法です 。
プロアクティブ療法…再燃を繰り返す場合、寛解した後も、抗炎症外用薬を間欠的(週に数回など)に塗ることで、良い状態を維持する方法です 。
近年では、このプロアクティブ療法が再発予防に有用だと考えられ、広く行われるようになってきています 。
ステロイド外用薬の副作用対策と新しい選択肢
ステロイド外用薬は炎症を強力に抑えますが、漫然と使い続けると皮膚が薄くなる(菲薄化)や多毛などの局所副作用が出ることがあります 。
これらの副作用を最小限に抑えつつ、安全に寛解状態を保つことが大切です 。
そのために、症状が落ち着いた後の寛解維持療法には、ステロイド以外の抗炎症外用薬も組み合わせて使われるようになっています 。
現在、アトピー性皮膚炎に使用できる主な外用薬には、ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏(プロトピック®)に加え、デルゴシチニブ軟膏(コレクチム®)やジファミラスト軟膏(モイゼルト®)、タピナロフクリーム(ブイタマー®)といった新しい薬剤が登場しています 。
これらの新しい外用薬は、ステロイド外用薬でみられる皮膚の菲薄化や多毛、またタクロリムス軟膏に特有の刺激感といった副作用がないため、比較的安全に長期間使用できるという特徴があります 。
そのため、ステロイド外用薬で症状が落ち着いた後の寛解維持期に適しています 。
難治例における新たな治療の選択肢(分子標的薬)
近年、これまでの外用薬などによる治療ではコントロールが難しかった中等症以上のアトピー性皮膚炎に対して、分子標的薬と呼ばれる新しいタイプの薬が登場しています 。
適切な外用療法やスキンケア、悪化因子対策といった基本治療を行っても寛解に至らない難治例への選択肢となります 。
治療のために大切なこと

アトピー性皮膚炎の治療は、医師が薬を処方するだけでは成り立ちません。外用薬は、飲み薬や注射と違い、ご自宅での塗り方や塗る量が効果に大きく影響します。
ご家族と私たち医療者が塗り方や生活の工夫を相談しながら進めることで、ご本人の治療への意欲が高まり、「ツルツルもちもちのお肌」を目指す力が強くなります。
ご不明な点や、外用薬の使い方で困っていることがあれば、いつでもご相談ください。