インフルエンザの治療薬について

こんにちは。滋賀県守山市、小児科・アレルギー科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。

急に寒くなりました。今年は例年よりもインフルエンザの流行が早く、当院にも連日たくさんの患者さんが来院されています。今回は2025/26シーズンの日本小児科学会の指針に沿って、インフルエンザ治療薬についてお伝えします。

インフルエンザは普通の風邪より熱が高く、長引くことがありますが、実は多くは自然に回復します。

とはいえ、指針でも「発症から48時間以内の早期投与」で熱の持続時間を短くし、重症化を防ぐ効果が示されています。

特に、1歳未満の乳児喘息や心臓病などの基礎疾患があるお子さん息苦しさが強い場合は早めの投与を推奨しています。発症後48時間以内が原則ですが、もしそれ以上たっていても、重症化するリスクが高い方で症状が長引く場合はお薬を考慮することもあります。

一方で、元気な方であれば自然に軽快するケースも多いので、必ず全員が治療薬を使わなくてはいけないわけではありません。

大切なのは、症状が出たらできるだけ早く受診することです。目安として発症後48時間以内に来ていただければ、検査・治療の選択肢が広がります。もし48時間を過ぎていても、ぐったりしたり呼吸が苦しそうな場合は遠慮なく医療機関へ受診してください。(受診のタイミングについては後ほどまた詳しくお伝えします。)

最もよく使われる内服薬で、カプセルや粉薬(ドライシロップ)があり、1日2回を5日間続けます。

生後2週以降の乳児から使えます。

発熱や倦怠感を和らげ、A型にもB型にも効果がありますが、特にA型に強く効きます。

副作用として吐き気が出ることがあります。

ザナミビル(リレンザ®)

吸入タイプの薬で、1日2回、5日間吸入します。直接のどや気道に届くので効果はしっかり期待できます。

ただし、4歳以下では安全性が確立していないため原則使用できません。また、急性期の喘息など呼吸器疾患のあるお子さんでは気管支がけいれんを起こすことがあるので、その場合は他の薬を選びます。

さらに、ザナミビルには乳糖(乳成分)が含まれるので、重度の牛乳アレルギーがあるときは医師に伝えてください。吸入が難しい年齢のお子さんには向きませんが、吸える子には有効な選択肢です。

ラニナミビル(イナビル®)

こちらも吸入薬ですが、1日1回2吸入または4吸入だけで治療が完了するのが大きなメリットです。

10歳未満は20mg、10歳以上は40mgを吸入します。吸うタイミングが1回だけなので、お薬を飲み続けるのが大変なお子さんにも喜ばれます。ただし、ザナミビル同様に急性期の喘息等があると気管支けいれんのリスクがあるので注意が必要です。またイナビルも乳糖を使っているため、牛乳アレルギーのお子さんは慎重に使用する必要があります。

ペラミビル(ラピアクタ®)

点滴(静脈注射)の薬で、通常1回の点滴投与で治療が終わります。

熱がひどくぐったりして飲めない場合によい適応となります。入院・点滴での治療が必要となるケースで用いますので、普段の外来ではあまり使うことはありません。生後1か月以上から使用できます。

バロキサビル(ゾフルーザ®)

2018年に登場した新薬で、内服は1回だけでOKです。ウイルスの増殖初期を止めるため、内服すると早く熱が下がりやすいです。

2025年9月には顆粒タイプ(粉薬)も発売され、錠剤が飲みづらい小さなお子さんにも使いやすくなりました。副作用は少なく、下痢程度のことが多いです。

ただし、インフルエンザA型では耐性株も報告されており、重症度や年齢によっては慎重に使用します。

逆にB型インフルエンザではタミフルなどより熱が下がるのが早いという報告が複数あり、学会でもB型ではゾフルーザの使用を提案しています。

小児への用量は体重別に決まっており、十分に経口投与できる年齢(目安として6か月以上)のお子さんに処方します。

異常行動

インフルエンザにかかると、取り乱したり幻覚めいたことを言ったりすることがあります。これはインフルエンザの薬を飲むかどうかに関わらずインフルエンザ罹患時に起こることが知られています。

10歳代に最もよく起こりますが、もっと小さい年齢のお子さんや、まれに大人にもみられることがあります。

高熱の時ほどよく起こりやすいため、発熱してから少なくとも2日間は様子をよく見てあげてください。

夜間はベッド周りに転落防止の工夫をしたり、目の届くところで安静にさせるようにしましょう。何かおかしいことがあればすぐ医療機関に連絡してください。

副作用・体調管理

薬にはそれぞれ副作用が出る場合があります。

タミフルは前述のように吐き気・嘔吐が起こることがあるため、食後に飲ませる・嘔吐したときは遠慮せず連絡をしてください。

リレンザ・イナビルなどの吸入薬はぜんそく持ちのお子さんに気管支けいれんを起こすことがあるので、呼吸器疾患がある場合は医師に相談しましょう。

また、リレンザやイナビルには乳糖が含まれるので重度の乳アレルギーでは使えません。

どの薬もまれに発疹や痙攣などが出ることがありますので、様子がおかしければ受診しましょう。薬を飲んだ後も、こまめな水分補給・休養を心がけ、体温や症状をよく観察してください。

熱が出てから12時間以内はインフルエンザの抗原検査は偽陰性が出ることがあります。体調が比較的落ち着いていれば一旦お家で様子をみていただき、12時間経過しても高熱が続くようであればできるだけ早めに(できれば症状発現から48時間以内に)受診しましょう。早いほど薬の効果が期待できます。

また、高熱が続く、ぐったりする、呼吸が苦しそう、おしっこの回数が少ないなどの脱水・重症を示唆するサインがあれば発症からの時間に関わらずすぐ受診をするようにしてください。

症状が軽いときでも心配なら遠慮なくご相談ください。当院では専用の個室や検査室を使ったり動線を工夫して他の患者さんと接触しないよう配慮しています。

ご家庭では、発熱中は無理に外出せず安静にしましょう。水分(お茶やスポーツドリンクなど)をこまめにとり、解熱剤や咳止めの薬を使うこともあります。食事にはこだわらず、食べなれた油分の少ないお菓子など、食べやすいものなら何でも構いません。

インフルエンザは急に症状が変化することもあります。熱が続いたり、いつもと違う様子があれば遠慮せず受診・ご相談ください。何かご不安なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。