ウイルス性胃腸炎のホームケア①

滋賀県守山市、小児科・アレルギー科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。

最近、ウイルス性胃腸炎が流行しています。お子さまをお持ちのご家庭では、急な嘔吐や下痢に不安を感じられている方も多いのではないでしょうか。今回は、ウイルス性胃腸炎の基本的な知識と、家庭で実践できるケア方法についてご説明いたします。

ウイルス性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスが原因で発症する感染症です。主な症状としては、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などが見られ、特に乳幼児にとっては、脱水症状が心配されるため注意が必要です。また、感染力が強いため、学校や保育園などでの集団感染が発生しやすいのも特徴です。

ご家庭でのケアについてお話する前に、様子を見ていると危険なケースについてお話します。自宅で過ごしていても大丈夫な症状かどうかの参考にしてください。

次のような症状が見られる場合は、早めに医療機関へ受診をしましょう。

red flag(危険信号)

特に2の「ちょっとした刺激に過敏に反応する、もしくは呼びかけに反応しない」は意識障害のサインですし、13の「黄色や緑色(胆汁性)の嘔吐もしくは血性嘔吐」は腸閉塞や腸重積などの外科的な治療を必要とする可能性のあるものです。

【水分補給】
ウイルス性胃腸炎では、嘔吐や下痢により体内の水分や塩分が失われやすく、脱水症状を引き起こすことがあります。

普段母乳やミルクを飲んでいる乳児は、飲めそうであれば継続して構いません。

水分を腸から効率よく吸収するためには、塩分と糖分が一定の割合で含まれた飲み物をこまめに摂取することが大切です。「こまめに」とは、ティースプーン1杯分を5分ごとが目安です。

飲んですぐに吐いてしまったら、30分空けて様子を見て、飲めそうならまた一口飲ませてみましょう。それ以上吐かなければさらに15分経ってから経口補水を続けましょう。

経口補水液(ORS)は飲みにくいですが、塩分と糖質と水分を理想的な割合で摂取することができ、家庭での脱水の治療として非常に有効です。最近はゼリータイプのものも販売されていて、塩味を感じにくくなっていますので、こどもが嫌がっても根気よく飲ませるようにしましょう。

市販されている経口補水液は以下の通りです。

  • オーエスワン®  
  • アクアライト®

自宅に経口補水液がない場合、水1Lに対し食卓塩3g、砂糖18gをよく溶かして簡単な経口補水液を作るのも良いでしょう。風味付けとして柑橘系の果汁を入れると飲みやすくなります。ただしあくまで経口補水液が手に入るまでの代わりとしてください。

また、どうしても経口補水液を嫌がる場合は、塩分を含んだ野菜スープやコンソメスープ、お味噌汁でもよいでしょう。

【食事について】

1日~2日経っても固形物がとれないと保護者の方は心配だと思いますが、基本的には水分がとれていればすぐに栄養失調になることはありません。

嘔吐が治まって水分がある程度とれるようになれば、胃腸に負担をかけない、消化に優しい食事を再開しましょう。はじめはゼリーやプリンでも構いません。ふだん離乳食や普通食を食べているお子さんは、食欲が戻ってきたら年齢に応じた食事を再開しても良いでしょう。

ただし、急に炭酸飲料を与えたり、脂肪分の多い食事(カレーやハンバーグ、焼き肉、揚げ物など)を再開すると下痢が悪化するため避けましょう。

日本小児救急医学会診療ガイドライン作成委員会編:小児急性胃腸炎診療ガイドライン
2017年版.2017.

小児と経口補水療法. 小児科臨床71巻9号 Page1487-1495.2018.

子どもの病気のホームケア : (7) 腹痛・嘔吐・下痢がある. チャイルド ヘルス(1344-3151)22巻1号 Page32-35.2019.