インフルエンザワクチンの有効性
滋賀県守山市、小児科・アレルギー科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。
インフルエンザが流行中です。当院にも特に12月中旬からたくさんの患者さんが受診されています。
その中には流行前にインフルエンザのワクチン接種を済ませている方もいらっしゃいます。今回はワクチンの有効性についてお話したいと思います。
(少し専門的な内容ですので、読みにくい場合はページ下の黒板の部分だけ読んでください)
ワクチンの有効性とは
ワクチンの有効性は、ワクチンの市販前の臨床試験と、市販後に世間で広く使用されている状況の2つで評価されています1)。
多くの方は「そもそもインフルエンザにかからない(発症予防)」ことを目的にワクチンを接種されると思いますが、ワクチンを接種する目的には重症化予防や合併症の予防、死亡率の減少なども含まれます。
これらの観点からインフルエンザワクチンの有効性についてみていきましょう。
インフルエンザワクチンの有効性
- 発症予防
インフルエンザにかからなくなる割合は年齢によって若干異なります。
例えば6歳未満の小児を対象とした2015年冬から2016年初旬の研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチン2回接種の有効率は60%と報告されています2)。
またイギリスの研究ではありますが、前シーズンである2023年冬のデータとして
小児(2~17歳)では63~65%、成人(18~64歳)では36~55%、65歳以上では40~55%の方に発症予防効果があったとされています3)。
若い世代ほど高い予防効果が見られますが、どの年齢層でも一定の効果があることがわかります。
「ワクチンを打ったら約半数の方が発症しない」ということになります。
- 重症化予防
2010年冬から2014年冬の5年間のデータで18歳以上の患者の入院に対する有効性は41%と報告されています4)。
また、高齢者の肺炎に対するインフルエンザワクチンの有効性をみた研究では、自宅に住んでいる方で25~33%、施設入居の方で36~47%に有効であったと報告されています5)。
インフルエンザワクチンを打たずに入院した人のうち半数弱は、「接種していればインフルエンザによる入院が避けられた」ということを意味します。
- 死亡率の減少
65歳以上の施設入所中の高齢者を対象とした国内の研究では、ワクチン接種によって死亡率が80%以上低下したという結果でした6)。このことは現在日本で高齢者のインフルエンザワクチン接種を定期接種としている理由の一つとなっています。
また1990年台に1~4歳の幼児のインフルエンザ関連の死亡数が増加しました7)。1990年から2000年の11年間でインフルエンザ関連と考えられる幼児の超過死亡数※が783人でしたが、この時期は小学校での集団インフルエンザワクチン接種が廃止された時期と重なっています。学童のインフルエンザワクチン接種によって感染者が減少し、1~4歳の幼児さんを守っていたと考えられます。最近では幼児期からのインフルエンザワクチン接種の増加や、罹患後の抗インフルエンザ薬の使用などが、死亡率の低下につながっています。
※超過死亡数…実際の死亡数(観測死亡数)が、過去のデータから統計学的に推計される予測死亡数を上回った数のこと。社会で何らかの事象が起きたとき、その全体的な影響を死亡者数という指標で測るものです。
まとめ
せっかく打ってもインフルエンザにかかってしまうなら来年は受けるのをやめようかな、という方もいらっしゃると思いますが、ワクチンの効果は発症予防だけではないということを知っていただき、来年以降も継続的な接種をお勧めします。
参考文献
1)ワクチン疫学研究の原理と方法:新型インフルエンザワクチンの免疫原性と有効性の評価
2)小児におけるインフルエンザワクチンの有効性モニタリング:2013/14 ~ 2015/16 シーズンのまとめ
5)Effects of influenza immunization on pneumonia in the elderly