居眠り運転を予防しよう

滋賀県守山市、小児科・アレルギー科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。今回は、耳鼻咽喉科から居眠り運転にまつわるお話をしようと思います。

いびき、日中の眠気が交通事故と関係する?

睡眠時無呼吸症候群という病気をご存じでしょうか。

睡眠時無呼吸症候群は、その名の通り睡眠中に呼吸ができなくなることにより起こる病気です。

自覚症状はいびき日中の過度の眠気睡眠中の窒息感あえぎ呼吸などです。

2003年2月、山陽新幹線の運転手が居眠り運転で岡山駅をオーバーランしました。後にその運転手が睡眠時無呼吸症候群であることが判明し、この事故を契機に睡眠時無呼吸症候群が広く知られるようになりました。

入眠中は、呼吸に関わる筋肉の緊張がゆるむため、上気道(息の通り道)が起きている時よりも狭くなります。これにより、肥満症の方や顎が小さい方など、元々上気道が狭い状態である人ほど、睡眠中に上気道がさらに狭まり、呼吸が困難になる、あるいは完全に止まることがあります。

睡眠時無呼吸症候群では、糖尿病、高血圧、心疾患、脳血管疾患などを高頻度に引き起こします。また、夜間に十分な睡眠を取れないことが、日中の眠気の原因となり、結果として居眠り運転を引き起こすことがあります。

当院がある滋賀県は、自動車を運転する方が多い地域です。公共交通機関の事情が大きいと思いますが、高齢になっても生活の足としてなかなか自動車が手放せない方が少なくありません。

日常的によく運転をされる方で、睡眠中にいびきをかいたり、日中の眠気を感じておられる方は注意が必要です。

睡眠時無呼吸症候群と運転中の交通事故

運転中の居眠りが交通事故の原因となることは広く知られていることです。特に、死亡事故につながる衝突事故の15~33%で居眠り運転が関与しているとする報告もあります1)

特に以下のような症状がみられる方は、早期の検査と診断・治療が薦められます2)

  • 日中、日常の活動中に、意識せずに居眠りしてしまうような眠気がある
  • 最近運転中に、眠気や疲労、不注意による事故、もしくはニアミスを起こしている

適切な治療を受けると日中の眠気は改善します

睡眠時無呼吸の適切な治療を受けることで、日中の眠気が改善することが様々な研究によって実証されています。

また、睡眠時無呼吸症候群と診断された職業ドライバーは、適切なCPAP治療を受けると、健常者と比べて衝突事故率が変わらなくなると報告されています3)。(CPAP治療については当院ホームページ「睡眠時無呼吸症候群の治療」をご覧ください。)

いびきや日中の眠気がある方はまず検査を受けましょう

居眠り運転は、正面衝突や転落など死亡事故につながることもあります。運転中に居眠りをしてしまう方は、早めに睡眠時無呼吸症候群の検査を受けることをお勧めします。当院耳鼻咽喉科では睡眠時無呼吸の検査を行っていますので、お気軽にご相談ください。

参考文献

1)Maia Q, et.al:Short and Long Sleep Duration and Risk of Drowsy Driving and the Role of Subjective Sleep Insufficiency. Accid Anal Prev 2013;59:618-622

2)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会編:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020.日本呼吸器学会,厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班監修 2020:100-101

3)Burks SV, et al:Nonadherence with Employer-Mandated Sleep Apnea Treatment and Increased Risk of Serious Truck Crashes. SLEEP 2016;39(5):967-975