ナッツ類の食物アレルギーについて知っておきたいこと

こんにちは。滋賀県守山市、小児科・アレルギー科、耳鼻咽喉科のきどわき医院です。

近年、くるみやカシューナッツなど、ナッツ類(木の実類)による食物アレルギーが増えています。

ナッツは以前は日本の食卓に日常的に並ぶものではありませんでした。しかし最近はパンやお菓子、カレールウなど、様々なところで使われています。「良質の油をとろう」など、健康志向の高まりからナッツ類を摂取される機会が増えてきています。

この記事では、食品のアレルギー表示制度の変更、ナッツ類のアレルギーを疑うべき症状、検査や治療、そして緊急時の薬(エピペン・ネフィー)まで、ご家庭で知っておいていただきたいことをまとめました。

【目次】

アレルギー表示に「くるみ」「カシューナッツ」が加わった

ナッツアレルギーが増加中

ナッツアレルギーを疑う症状

注意したい食べ物

ナッツの種類による違い

ナッツアレルギーは治るか

ナッツアレルギーの診断について

治療と緊急時の対応について

加工食品のアレルギー表示には、必ず表示するルールの「特定原材料」と、表示をすすめる「特定原材料に準ずるもの(推奨表示)」があります。

くるみは、2023年(令和5年)に従来の7品目(卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに)に加えて義務表示の対象になりました。準備期間(経過措置)は2025年(令和7年)3月31日で終わり、現在は表示が必要です。


カシューナッツは2026年(令和8年)4月1日から、9品目目の義務表示の対象になりました。2028年(令和10年)3月31日までに製造・加工・輸入された食品は、改正前の表示のまま販売できる経過措置があります。このため、しばらくは「表示がない=入っていない」とは言い切れない商品が店頭に残る可能性があります。


マカダミアナッツは2024年(令和6年)3月から推奨表示の対象です。
ピスタチオはカシューナッツの義務化と同じ改正で、推奨表示の対象に加わりました。

なお、レストランなどの外食やお店のその場での提供、量り売りのお惣菜などは、この表示制度の対象外です。外食では、お店に直接確認するようにしましょう。

消費者庁の全国実態調査(令和6年度報告)では、食物アレルギーの原因として、木の実類が全体の24.6%を占め、鶏卵(26.7%)に次いで第2位でした。前回の2020年の調査では、鶏卵・牛乳・木の実類の順でしたが、今回は牛乳を抜いて第2位になりました。

くるみは15.2%で、2020年の前回調査(7.6%)から約2倍に増えました。 カシューナッツも、前回の2.9%から4.6%と、約1.6倍に増えています。 マカダミアナッツ(0.7%→1.1%)、ピスタチオ(0.4%→0.8%)、ペカンナッツ(0.3%→0.6%)も増えていました。

新たに症状が出たお子さんでは、3〜6歳でくるみが34.5%、カシューナッツが9.2%で、合わせて半数近く(43.7%)を占めました。1・2歳(くるみ19.6%、カシューナッツ6.5%)、7〜17歳(くるみ18.7%、カシューナッツ6.3%)でも、くるみとカシューナッツが目立ちました。

背景には、ナッツ類の消費が増え、粉末やペーストとしてお菓子やパンに使われる機会が増えたことが指摘されています。表示制度が見直されたのも、こうした症例の増加を受けたものです。

ナッツを食べたあと、通常は数分〜2時間以内に、次のような症状が出ます。

・皮膚:じんましん、赤み、かゆみ、顔や唇のはれ
・口や喉:口の中や喉のイガイガ・かゆみ、声がかれる
・お腹:繰り返す嘔吐、腹痛、下痢
・呼吸器:咳が止まらない、ゼーゼーする、息苦しい
・全身:顔色が悪い、ぐったりする、意識がもうろうとする(アナフィラキシー)

ナッツ類のアレルギーは、ごく少量でも症状が出ることがあり、重い症状になることも珍しくありません。皮膚と呼吸器、皮膚と消化器など、症状がいくつも同時に出たとき、またぐったりしているときは、アナフィラキシーを疑って救急受診が必要です。

一度でも「ナッツを食べて症状が出たかも」と思ったら、自己判断で同じものをもう一度試さず、受診してください。

ナッツはそのものだけでなく、加工食品に使われていることがあります。

クッキー、パン、ケーキ、チョコレート、アイスクリームなどのお菓子には、粉末やペーストの形で入っていることがあります。
カレールウ、ドレッシング、たれ、「〇〇の素」などの調味料にも、こくを出すために使われますし、グラノーラ・シリアルバーにも含まれることがあります。

最近は牛乳の替わりの乳製品に似た飲料として、アーモンドミルクがスーパーでも手軽に購入できるようになりました。

確認のポイントは、原材料表示を毎回読むことです。同じ商品でも、製造所やリニューアルで原材料が変わることがあります。また、カシューナッツは上に書いたとおり、2028年3月末まで経過措置があるため、表示がなくてもパッケージ裏の注意書きなどを確認しましょう。

※なお、ピーナッツ(落花生)は豆の仲間で、木の実とは別のグループですが、両方にアレルギーがあるお子さんもいます。

くるみとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオは植物として近い仲間で、アレルギーの原因物質が似ているため、一方にアレルギーがあると、もう一方でも症状が出ることがあります。

また、血液検査が陽性でも実際には食べられるナッツもあります。どのナッツを避けるべきかは、自己判断せず医師と相談して決めましょう。

卵・牛乳・小麦のアレルギーは、成長とともに食べられるようになるお子さんが多い一方で、ナッツ類は一般に治りにくい傾向があるとされています。

ただし、くるみ・カシューナッツについては、どのくらいの割合のお子さんが何歳ごろまでに食べられるようになるのかを示す十分なデータが、まだ限られています。現在、国内でも自然経過の研究が進められています。

成長とともに食べられる量が増えるお子さんもいるため、「治らないから」と決めつけず、定期的に医師が状況を確認しながら、必要に応じて負荷試験で評価します。

何を、どのくらい食べて、どんな症状が、どのくらいの時間で出たかが最も重要です。食べたものの写真や、食品の原材料表示があると診断の手掛かりになります。

血液検査ではナッツの種類ごとに特異的IgE抗体というアレルギーの項目を調べます。一部のナッツでは、アレルギーの原因となる成分ごとに調べる検査(成分別検査)もあります。

ただし、血液検査が陽性であることは「感作されている(アレルギーの素地がある)」ことを示すだけで、実際に症状が出るかは別問題です。つまり、血液検査の結果だけで「食べられる・食べられない」を決められるものではなく、必要以上に食べ物を制限し続けることは、お子さんの食事や生活の負担につながります。

一方で、血液検査で陽性となったナッツでまだ食べたことのないものをご家庭で「試しに食べてみる」ことはおすすめしません。ナッツ類は少量でも重い症状(アナフィラキシー)が起こることがあるからです。

食べられるかどうかの確認が必要な場合は、安全に対応できる医療機関で、食物経口負荷試験を行います。
この検査は、実際に、ごく少量から医師の管理下で食べて、症状が出るかを確認する検査です。確定診断につながる方法ですが、ナッツ類は重い反応のおそれがあるため、実施できるのは対応可能な医療機関に限られます。当院では食物経口負荷試験は行っておりません。必要な場合は、実施可能な専門の医療機関をご紹介します。

ナッツアレルギーの治療の基本は、原因となるナッツを正しく診断したうえで、必要最小限で除去することと、誤って食べてしまったときの備えです。

症状が出たときの対応について、皮膚症状のみなら飲み薬、重い症状なら救急受診をするなど、あらかじめ主治医と確認しておきます。
アナフィラキシーのリスクが高いお子さんには、アドレナリン(エピペン®・ネフィー®)を処方します。
少しずつ食べて慣らす治療(経口免疫療法)は、ナッツ類では研究段階で、標準的な治療として確立されていません。専門施設の臨床研究として行われているものがあります。

なお、エピペン®もネフィー®も、処方するために医師が講習を受けて登録する仕組みがあります。当院では小児科の医師が処方医登録をしています。エピペン®やネフィー®についての詳細は、次回のブログで取り上げたいと思います。

ナッツアレルギーについて気になる症状や不安なことがあれば、当院小児科・アレルギー科までお気軽にご相談ください。