子宮頸がんワクチンについて(後編)

HPVワクチンの安全性と、接種を考えるタイミングについて
こんにちは。滋賀県守山市、小児科・アレルギー科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。
今回は前回に引き続き子宮頸がんワクチンについてのお話です。
前編では、子宮頸がんがどのような病気か、そしてHPVワクチンによって将来的な発症リスクが大きく下がることをお伝えしました。
後編では、多くの保護者の方や接種するご本人が気にされる 「安全性」 と 「いつ接種するのがよいのか」 についてお伝えします。
目次
HPVワクチンの副反応について
HPVワクチンで報告されている副反応の多くは、他のワクチンと同様のものです。
- 接種部位の痛み、腫れ、赤み
- 一時的な発熱
- だるさ、頭痛
これらは 数日以内に自然に軽快することがほとんど です。
一時期、接種後に長期間続く体調不良が報道され、大きな不安が広がりました。しかしその後、国内外で多数の調査が行われ、「HPVワクチンと特定の慢性的症状との因果関係は認められていません 」という結論が示されています。1)
現在、日本では接種後に体調変化があった場合に、専門医療機関で評価・診療を受けられる体制も整えられています。
「安全」と言える根拠はどこにあるのか
HPVワクチンは、日本だけで使われているものではありません。
世界100か国以上で導入され、数億回以上接種されてきたワクチンです。
その中で、重篤な副反応が極めてまれであること、接種した集団で子宮頸がんの前段階病変、そして実際のがん発症が大幅に減っていることが、複数の大規模研究で確認されています。2)
日本産婦人科学会、日本小児科学会、厚生労働省も、現在は HPVワクチンを積極的に勧奨する立場 を明確にしています。3)4)
推奨される接種時期について
HPVワクチンは、HPVに感染する前に接種することで最も高い効果を発揮します。
そのため、日本では小学校6年生〜高校1年生相当の年齢が定期接種の対象とされています。
この時期は、免疫の反応も良く、少ない回数で十分な効果が得られることがわかっています。
すでに対象年齢を過ぎた方でも、一定の予防効果は期待できますが、効果の大きさという点では「早めの接種」が有利です。
「接種しない」という選択をした場合、何が起こりうるのか
ここでは「接種しない」という選択をした場合に、現実としてどのような状況が考えられるかについてお話ししたいと思います。
HPVは、特別な人だけが感染するウイルスではありません。多くの方が、人生のどこかで一度は感染するといわれています。ワクチンを接種しない場合、HPVに感染するかどうかは自然の経過に委ねられます。感染しても多くは自然に体からいなくなりますが、一部ではウイルスが長く残り、子宮頸がんの前段階となる病変や、がんへと進行することがあります。
子宮頸がんは、早期であれば完治が見込める病気です。一方で、治療内容によっては子宮の手術が必要になり、将来の妊娠や出産に影響が出ることもあります。命が助かることと、これまで通りの生活が続けられることは、必ずしも同じではありません。また、進行して見つかった場合には、若くして命を落とす可能性がある病気でもあります。
接種しないという選択は、「何もしない」という意味ではありません。その場合、定期的な検診の重要性はより高くなります。ワクチンを接種した場合でも検診は必要ですが、接種していない場合は、予防の選択肢が限られる分、検診を確実に受け続けることが特に重要になります。
接種を考えるときに大切なこと
HPVワクチンは、誰かに強制されるものではありません。
不安がある場合は、医師に相談し、納得したうえで判断することが大切です。
また、接種するかどうかについては保護者の方が判断されることが多いと思いますが、将来検診や治療について考えるのはご本人自身です。そのときに、どのような選択肢があったのかを知った上で判断できるよう、今の段階で正しい情報をご本人自身も知っておくことが大切です。
接種する場合も、しない場合も、ご本人やご家族が納得して決めていただきたいと思います。
【参考文献】
1)厚生労働省
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの安全性について 厚生労働省公式資料.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/yobou/hpv.html2)Drolet M, Bénard É, Pérez N, et al. Population-level impact and herd effects following human papillomavirus vaccination programmes: a systematic review and meta-analysis. The Lancet. 2019;394(10197):497–509.doi:10.1016/S0140-6736(19)30298-3
3)日本産婦人科学会 HPVワクチンに関する見解 日本産婦人科学会 公式見解.
https://www.jsog.or.jp/modules/about/index.php?content_id=94)日本小児科学会 HPVワクチンに対する考え方 日本小児科学会 公式声明.
https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=347
