痛みのない中耳炎のはなし
こどもの滲出性中耳炎について
滋賀県守山市、小児科・耳鼻咽喉科のきどわき医院です。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今回はこどもの中耳炎に関するお話をします。
中耳炎というと、急に耳が痛くなったり、耳から液体が出たり、発熱することがある病気として広く知られています。このような中耳炎は「急性中耳炎」といい、ほとんどが鼻の炎症が拡がって耳の奥の「中耳」という場所に炎症を及ぼすことによって引き起こされます。
一方で、「滲出性中耳炎」は、中耳に液体がたまる状態です。痛みは伴いませんが、聞こえにくさ(難聴)の原因となることがあります。
大人の場合、耳が詰まった感じや聞こえにくさを自覚して受診されることが一般的です。しかし、まだ自分の症状を上手に伝えることが難しいお子さんの場合、保護者が気づかないうちに両耳が滲出性中耳炎になっていることがあります。
滲出性中耳炎の原因
こどもの滲出性中耳炎は、風邪をひいたときや急性中耳炎のあとに発症する場合が多いです。
風邪をひいて鼻の炎症が起きたり、急性中耳炎にかかると、中耳に液体がたまることがあります。特にお子さんの場合、耳と鼻の間にある「耳管」という管が大人に比べて角度が緩やかなため、鼻水や鼻にいる細菌・ウイルスが耳に入りやすく、それが中耳炎の原因となりやすいと考えられています。
滲出性中耳炎の症状と影響
さて、滲出性中耳炎が引き起こす症状やその影響についてみていきましょう。
- 症状:難聴と耳の詰まり感
主な症状は難聴と耳の詰まった感じです。特に発熱や耳の痛みはほとんどありませんが、注意が必要です。
多くの場合、滲出性中耳炎は自然に治りますが、痛みが伴わないため、特に年少のお子さんは気づかれずに長期間見過ごされることがあります。
- 影響:こどもの発達と学習に懸念、難治性の中耳炎に進展することも
では、なぜ滲出性中耳炎を治療する必要があるのでしょうか。実は長い間 聞こえにくい状態で過ごしていると、ことばの発達に影響が出たり、集中力が妨げられることがあります。お子さんが痛みを訴えず、機嫌もよく、熱もない、そんな状態でも治療が必要な理由はここにあります。
さらに、液体が中耳に長期間たまることで、鼓膜が薄くなり、時に手術が必要となるような難治性の中耳炎の原因になることも考えられます。
こどもの難聴に気づくには
滲出性中耳炎による難聴は、全く音が聞こえなくなるわけではありませんので、普段の生活ではなかなか気づきにくいものです。しかし、いくつかのサインに注目することで発見することができる場合があります。
例えば、呼びかけても振り向かない、どことなく音に反応が悪くなった、表情が乏しくなった、テレビや動画に耳を近づけるようになった、などが難聴のサインとなります。
これまでよりもどことなく音に対する反応が悪いなと思われたら、お家でできる簡単な聞こえのテストをしてみましょう。ささやき声で後ろからお名前を呼びかけて、振り向かれたらOKとします。何度呼びかけても振り向かないなど判断に迷うときは、耳鼻咽喉科を受診してください。
滲出性中耳炎の治療と注意点
滲出性中耳炎の場合、お子さんが元気でも鼓膜の状態が良くなるまで耳鼻咽喉科に受診することが重要です。
多くの場合は自然に治りますが、3か月以上中耳に液体が溜まり続ける場合は自然治癒が難しいとされ、その際 特に難聴がある場合はシリコンのチューブを使った手術が検討されることもあります。
滲出性中耳炎はお子さんのことばの発達に影響を及ぼす可能性があるため、早めの診断と適切な治療が大切です。診断されたら定期的な耳鼻咽喉科の受診を心がけ、お子さんの健やかな成長をサポートしましょう。